任意後見人が負う義務と職務
🔸任意後見人の義務
まず任意後見人は、法定後見人とは違います。
任意後見人は任意後見契約により契約を交わした人物です。
任意後見制度を利用するには、あらかじめ任意後見人になる人物と
公証役場にて、公正証書によって任意後見契約書を作成しておかなければいけません。
さて、その任意後見人ですが、以下のような義務を負います。
①善良な管理者としての注意義務(民法644条)
事務を行うにあたり、他人の財産を管理する者として
一般的に要求される水準の注意力をもって管理を行う義務を負います。
②委任事項の状況を報告する義務(民法645条/任意後見契約法7条2項)
本人の請求があるときは、委任事項を報告する義務や
受任事項を処理するうえで受け取った金銭その他の物を
本人に引き渡す義務があります。
また、任意後見監督人に対する、任意後見事務の報告義務もあります。
※任意後見監督人は、家庭裁判所が選任します。任意後見監督人には報酬を支払わなくてはならず、
この額は、本人の資産状況などを考慮し、家庭裁判所が決定します。
③本人の意思尊重義務と身上配慮義務
「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うにあたり、
成年後見人の意思を尊重し、かつ、その心身状態及び生活の状況に配慮しなければならない」と
規定されています。
任意後見人の職務に関しては、
①財産管理に関する法律行為
例えば、預貯金の管理、払い戻し、不動産などの重要な財産の処分、
遺産分割協議、賃貸借契約の締結や解除などがあげられます。
②身上監護に関する法律行為
例えば、介護契約(介護サービス契約の締結)、施設入所契約、医療契約の締結や
解除があります。
従って、介護や看護などの事実行為は、任意後見の義務には当たりません。
ですから、介護サービスを希望する場合は、例えば、任意後見人に頼みたいときは、
別途、準委任契約を結ばなくてはいけません。
そうでなければ、介護のサービス業者等と、任意後見人が本人の代理として
契約を結ぶなどの方法もあります。