任意後見契約 移行型の注意点
‣任意後見契約の移行型とは
財産管理等委任契約と任意後見契約を同時に契約しておき、
本人(委任者)の判断能力が十分でなくなったときに、
本人の配偶者や受人者などが、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申し立てをします。
任意後見監督人が選任されることで、財産管理等委任契約は終了し、任意後見契約が始まります。
これが、任意後見契約の移行型といわれるものです。
任意後見契約の移行型には注意する点があるいます。
それは、本人の判断能力が低下しているにもかかわらず、
任意後見契約をスタートさせずに、財産管理等委任契約を継続させたままの状態が
あり得るということです。
‣なぜ、財産管理等委任契約がけいぞくされるのか?
財産管理等委任契約が継続状態になってしまうのには、様々な理由が考えられます。
・受任者にとってみれば、財産管理等委任契約も任意後見契約も、受任者としての仕事は
さほど変わるものではなく、特に困ることがないこと
・任意後見監督人に監督されることが煩わしいこと
・任意後見監督人への報酬が発生してしまうこと
そして、一番考えられるのが任意後見制度自体があまり
よく理解されていないことではないでしょうか。
判断能力が不十分になったら、本人の保護のため任意後見契約をスタートさせる内容の
任意後見契約を結んでいるため、本人の判断能力が不十分になっても
受任者が、財産管理等委任契約を継続していることは、明らかに違法であります。
それは、受任者を監督する者が誰もいない状態(本人も判断能力が不十分な状態のため)を
作り出すことになり、受任者の不正や代理権の濫用の温床となります。
‣そうならないために
①信頼のおける親族などを、受任者として複数人選任しておく。
また、財産管理等委任契約において、委任者と受任者の信頼関係を構築出来るようにする。
そこで不信感を覚えたときは、契約の解除を検討する。
②受任者を監督する者を置く
受任者をチェックするとともに、できるのなら指導をする。
監督する者には、信頼できるひとで任意後見制度についての知識をある程度持っている人が
いいかと思います。
また、財産管理等委任契約ではなく、
公共サービスの「日常生活自立支援サービス」と継続見守り契約の併用を検討する。
他にも、家族信託を利用することなどが考えられます。
見守り契約と家族信託については、後日説明いたします。
平成18年の任意後見契約書の作成件数は、4732件で
平成28年は、1万616件となっています。
増加しているとはいえ、認知症の方が462万人といわれていますので、任意後見制度が
十分に認知され機能しているとは言えない状態です。
制度の複雑さが影響しているものと予想されますが、
認知症になってしまい、契約する能力が無くなってしまえばどうすることもできません。
いち早く、任意後見制度も含めてですが、
様々な制度やサービスを、わかりやすい形で理解し納得してもらうようにする必要があると考えています。