療養看護してくれた分、少し多く財産を渡したい
息子、娘または、その奥さんや旦那さんに面倒を見てもらった場合、
特に介護してくれた場合、その分は遺産を分けるときに考慮されるかどうかは、なかなか難しい問題です。
例えば、長男の奥さんが義理の両親の面倒を看てきた場合などが考えられます。
⊶参考図
寄与分というものがある
民法には「特別受益」というものがあり、遺産を分けるときに考慮されます。
例えば、二男が家を買うときにだけお金を出してくれた場合、
このお金は、遺産の前渡しという意味合いをもち、遺産分割のときに特別受益として相続分が調整されます。
そして「寄与分」というのは「特別受益」(相続財産をマイナスにした調整)と違い、
相続財産へプラスの効果をもたらした人がいた場合、寄与分として相続分を調整するものといえます。
プラスの効果というは、民法には
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
(青線・赤線は筆者による)
とあることから、介護が特別の寄与にあたるのかが問題となります。
親族間には扶養義務や、お互い助け合う義務があるので、
それを超える寄与であるかが問題であり、寄与分が認められにくい理由でもあります。
そして、共同相続人中とあるので、相続人でなければいけません。息子の奥さんや、婿さんは相続人ではないので、
原則、寄与分は認められません。
相続人同士で介護を遺産に反映させた話し合いをする
相続人間で協議し、ずっと介護してくれていたからと、寄与分を反映させられた遺産分割が行われれば理想ですが、
・寄与分は相続人だけのものではないのか。
・扶養義務や、お互い助け合う義務が親族間にはある。相続とは関係ない。遺産は平等に分けるべき。
・苦労しているのはわかるが、それがいくらの価値なのかわからない。
などの理由で、話し合いがうまくまとまらないことも多々あるかと思います。
合意出来ない場合は、家庭裁判所に申し立てをすることになります。
親族間には、扶養義務・お互いが助け合う義務があること、
相続人にしか、原則、寄与分は認められないことから、
寄与分が認められることは少なく、認められても少額になるケースが多いです。
そして、介護保険制度が導入されたことより、公的な支援を受けている場合は
介護自体が寄与分として認められにくい傾向になってきています。
介護してくれた気持ちを遺産として残すには
介護してくれた、面倒を見てくれたことが、「寄与分」として認められることは難しいです。
ですので、もし感謝の気持ちとして介護してくれた人に、少しでも多く財産を渡すのなら
1、被相続人(介護された人)が、毎年一定の贈与をする。
2、多めに遺産を分ける(遺言書を書いておく)
などの、事前の準備が必要です。
その他にも、生命保険に入っておく、養子縁組を結ぶなどの方法も考えられます。
まとめ
介護が寄与分として認められることは難しいので、
被相続人(介護された人)が何もしなければ、
遺産分割のときに、介護の事は反映されません。
ただし、残された相続人間で介護をした人に、多く財産を渡すように協議することはできます。
話し合いがうまくいかず、寄与分を求めるなら家庭裁判所へ申し立てることになります。
介護してくれた人に少しでも多く財産を渡したいのなら、
毎年少しずつ贈与するか、多く財産を渡すように記した遺言書を書いておくべきです。
また、生命保険や養子縁組を結ぶなどの方法も考えられます。
この記事が、何かを考えるきっかけになってくれれば幸いです。